大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成6年(ワ)22052号 判決 1996年3月06日

本訴原告・反訴被告

堀山進

ほか一名

本訴被告

有限会社大塚利和商店

ほか一名

本訴被告・反訴原告

若井典明

主文

一  本訴被告有限会社大塚利和商店及び本訴被告(反訴原告)若井典明は、連帯して、本訴原告(反訴被告)らに対し、それぞれ二二六万八六六六円及び右各金員に対する平成四年六月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  本訴被告興亜火災海上保険株式会社は、本訴被告有限会社大塚利和商店に対する前項の判決が確定したときは、本訴原告(反訴被告)らに対し、それぞれ二二六万八六六六円及び右各金員に対する平成四年六月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  反訴被告(本訴原告)らは、反訴原告(本訴被告)若井典明に対し、それぞれ三二万三五一七円及び右各金員に対する平成四年六月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  本訴原告(反訴被告)ら及び反訴原告(本訴被告)のその余の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は、これを一〇分し、その二を本訴被告(反訴原告)若井典明の、その一を本訴被告有限会社大塚利和商店及び同興亜火災海上保険株式会社の、その余を本訴原告(反訴被告)らの負担とする。

六  この判決は、第一、第三項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  本訴

1  本訴被告有限会社大塚利和商店及び同若井典明は、連帯して、本訴原告らに対し、それぞれ二七八四万八四五九円及び右各金員に対する平成四年六月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  本訴被告興亜火災海上保険株式会社は、前項の判決が確定したときは、本訴原告らに対し、それぞれ二七八四万八四五九円及び右各金員に対する平成四年六月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  反訴

反訴被告らは、反訴原告に対し、それぞれ八三万一九七〇円及び右各金員に対する平成四年六月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  争いのない事実等

1  事故の発生

(一) 日時 平成四年六月三日午後一一時三五分ころ

(二) 場所 東京都足立区千住橋戸町一一番地先路上

(三) 加害車 訴外日通商事株式会社(以下「日通」という。)が所有し、本訴被告有限会社大塚利和商店(以下、単に「被告大塚」という。)が日通から貸与を受けて保有し、訴外根本研一(以下「根本」という。)が運転する普通貨物自動車

(四) 被害車 堀山真吾(以下「真吾」という。)が運転する自動二輪車

(五) 事故態様 被害車が前記道路(以下「本件道路」という。)を走行して、事故現場に設置された横断歩道(以下「本件横断歩道」という。)を通過しようとしたところ、横断中の本訴被告・反訴原告若井典明(以下、単に「被告若井」という。)に衝突し(以下「本件第一事故」という。)、その反動で、被害車に乗つていた真吾は左斜め前方である前記道路の左端に駐車中の加害車に衝突した(以下「本件第二事故」といい、本件第一事故と併せて「本件事故」という。)。

2  本件事故の結果

真吾は、胸部打撲による肺挫傷により、翌日午前八時一二分に死亡した。

また、被告若井は頭蓋骨骨折、脳挫傷により、入院二四日間(駿河台日大病院に平成四年六月四日から同月一六日までの一三日間、亀戸病院に同日から同月二七日までの一二日間。乙一、二、四、五の1、2)を要する治療を余儀無くされた。

3  真吾の身分と本訴原告(反訴被告)らとの関係

真吾は、本件事故当時、一九歳で専門学校に在学する一年生であり、本訴原告(反訴被告。以下、単に「原告」という。)らは、真吾の両親である(甲一の1、一三、原告堀山進、弁論の全趣旨)。

4  損害の填補

原告らは、加害車の自賠責保険金二四二二万二六九九円を受領した。

また、被告若井も被害車の自賠責保険金三八万七九九〇円を受領した。

5  自動車保険契約の存在

本訴被告興亜火災海上保険株式会社(以下、単に「被告興亜」という。)は、日通との間で、本件事故当時、加害車につき日通を被保険者とする自動車保険契約を締結しており、被告大塚は許諾被保険者であるから、被告大塚が損害賠償責任を負担する場合には、被告興亜も同額の填補責任を負う。

二  争点

1  本件事故態様と被告ら及び真吾の責任

(一) 被告らの主張

(1) 被告若井の主張

被告若井は、本件横断歩道を青信号に従つて横断中であつた。本件事故は真吾の信号無視に起因するものである。

(2) 被告大塚、同興亜の主張(免責の主張)

本件事故は、真吾と被告若井の双方の過失が競合して発生したものであり、加害車の前記駐車行為と本件事故との間には相当因果関係はないし、横断歩行者と自動二輪車とが接触して駐車車両に衝突することまで根本が予見することは不可能であるから、同人には駐車行為に当たつて過失はない。また、本件第二事故と真吾の死亡との因果関係も明らかではない。

(二) 原告らの主張

(1) (被告若井の主張に対して)

真吾は、本件道路を青信号に従つて本件横断歩道を通過しようとしたところ、被告若井が赤信号を無視して横断中であつたために、これと衝突したものである。

(2) (被告大塚、同興亜の主張に対して)

争う

2  損害額の算定

(一) 真吾の損害

(1) 治療費 一三一万一七五八円

(2) 葬儀費 二一九万二三八七円

(3) 逸失利益 四一四一万五四七二円

真吾は本件事故当時、専門学校一年生に在学していた一九歳の青年であつた。したがつて、基礎年収を四八三万六九〇〇円、生活費控除率五〇パーセント、就労開始時期が二〇歳として六七歳までの四七年間就労可能として計算すると、以下のとおりとなる。

四八三万六九〇〇円×(一-〇・五)×(一八・〇七七一-〇・九五二三)=四一四一万五四七二円

(4) 慰謝料 三〇〇〇万円

(5) 弁護士費用 五〇〇万円

(二) 被告若井の損害

(1) 治療費 一八万三九三〇円

(2) 入院雑費 三万七五〇〇円

(3) 休業損害 六四万〇五〇〇円

被告若井は、本件第一事故により、平成四年六月四日から七月二三日までの五〇日間欠勤を余儀無くされたため、給与を受けられず、年末の賞与も一二万一五〇〇円減額された。

得べかりし給与額は、平成四年三月から五月までの三か月間の給与が九三万四二七五円で一日当たり一万〇三八〇円となり、五〇日分は五一万九〇〇〇円であるから、休業損害は合計六四万〇五〇〇円である。

(4) 慰謝料 八九万円

(3) 弁護士費用 三〇万円

第三当裁判所の判断

一  本件事故の態様及び事故当事者の責任

1  本件事故態様について

前記争いのない事実、甲一の1、2、二、三の1ないし3、四、五、乙一四、証人小磯雅之(以下「小磯」という。)の証言、原告堀山進、被告若井の各本人尋問の結果、弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件事故現場付近は、別紙現場見取図(以下「別紙図面」という。)のとおりであり、本件事故現場は、千住大橋方面と千住新橋方面とを結ぶ片側三車線の通称日光街道(本件道路)の千住新橋方面に向かう車線内である。当該車線の歩道寄りの第一車線から中央寄りの第三車線はいずれも幅員が三・四メートルであるが、第一車線と左脇に設置された歩道との間には幅員一・五メートルの路側帯(以下「歩道寄り路側帯」という。)、第三車線と中央分離帯との間には幅員一・〇メートルの路側帯がそれぞれ設置されている。本件道路の事故現場付近は直線状であるため、前方の視界は良好ではあるが、本件横断歩道から千住大橋側の中央分離帯はグリーンベルトとして木が植樹されており、その高さは本件横断歩道から車両三台ないし四台程度の距離までは一メートル未満であるが、それよりもさらに千住大橋寄りの木の高さは一メートルを超える程度となつているため、本件横断歩道に相当程度接近した位置でないと、対向車線の交通状況については十分には視認し得ないと推認される。

本件道路は駐車禁止、転回禁止、時速五〇キロメートルの速度規制がなされている幹線道路であり、事故直後の実況見分時と同様、本件事故当時も車両の通行のかなり多い交通頻繁な状況であつたと推認される。

本件事故当時は降雨はなく、本件事故現場が市街地にあつて照明のあるところであるため、視界状況は良好であつたと推認される。

(二) 本件事故当時、根本は、本件道路脇の牛丼屋で食事をするために、別紙図面の甲の位置に歩道寄り路側帯と第一車線に跨がるようにして加害車を停車させていた。これによつて、第一車線のうち、加害車の右側に残された空間部分は約一・七六メートルと極めて僅かであり、この部分を車両が走行することは事実上困難な状態である。

(三) 本件事故当時、真吾は、渋谷の割烹料理店で雑役のアルバイトからの帰宅途中であり、本件道路を千住大橋方面から千住新橋方面に向けて第一車線上を走行していた。本件事故現場の対面信号(以下「本件車両信号」という。)から一つ手前の信号を青信号でそのまま通り抜けたが、本件車両信号が赤だつたので速度を時速約五、六〇キロメートルから三〇キロメートル程度に落として走行を続けた。そして、真吾は、本件横断歩道に接近しつつある時に本件車両信号が赤から青に変わつたのを視認したので、そのまま本件横断歩道を通過しようと加速した。真吾が青信号を視認したのは別紙図面<1>から<2>の地点に差し掛かつた段階であると推認される。そして、被害車が本件横断歩道上を走行しているときに、右側から横断してきた被告若井と衝突した(以下「本件第一事故」という。)。真吾は、被告若井との衝突を避けようと左に被害車を向けたために左に転倒して滑走していつた。そして、真吾は、前記のとおりに駐車していた加害車の右側面の巻き込み防止用角パイプ(直径五センチメートル)に衝突した(以下「本件第二事故」という。)が、それによつて、加害車は同パイプが最大〇・三メートル内側に曲損する等の損傷を受けたことからすると、真吾が加害車に衝突した衝撃は極めて強度のものであつたと推認される。

(四) 被告若井は、本件事故当時、勤務先の内山観光バス株式会社を退出して同僚と居酒屋、レストランで飲食をした後、帰路につき、千住河原町一二番側の歩道から反対側の歩道に渡つて本件事故現場に近接する千住大橋駅に赴くため、本件横断歩道を歩行中、別紙図面<×>の地点で被害車と衝突した。被告若井が乗車しようとした電車は同駅一一時四〇分であつたと推認される。なお、居酒屋では午後九時ころまでの間に二人でビール五本を飲み、その後に行つたレストランでも、午後一一時三〇分ころに出るまでの間、ビールを二本飲んでいる。なお、被告若井のアルコール量の適量はビール四、五本である。

原告は、本件横断歩道を横断し始める際に、対面する歩行者用信号(以下「本件歩行者信号」という。)を確認したが、その時の表示は点滅のない青色であつた旨供述するところ、前記認定に係る本件事故時における本件道路の交通状況のほか、被告若井の前記飲酒量が同人にとつてはさほど多くはないこと、同人が本件事故発生時の五分後の電車に間に合うように駅に向かつていることを勘案すると、被告若井は、本件事故当時、飲酒によつて事理を認識する能力は全く減耗していたとは認められず、通常人と同様の明確な意識の下で、対面する本件歩行者信号が青色であることを確認した上で横断を開始したものと認められる。

なお、被告若井は、横断開始時には本件歩行者信号が青色であることを確認しているが、その後被害車に衝突するまでの間、同信号の表示を見ていない旨供述する。

(五) 小磯は、本件事故当時、真吾のやや右後方に付いたように並行して、第一車線上を別紙図面のの順序で走行していた。本件横断歩道に差し掛かつた際、第二車線上には、横断歩道手前の停止線から、別紙図面のとおり点線で囲んだ長方形の位置に、四、五台の車両が並んで停止していた状態であつたが、本件車両信号が青色になつたのに先頭車両が発進しないので様子がおかしいと思つた直後に、小磯はその停止車両の陰から被告若井が出てきたのを発見し、急制動を掛けたところ、かろうじて衝突を回避することができた。小磯は、第二車線上の先頭車両の様子が不自然であることを感じたのは、別紙図面の位置であつたが、不自然だと感じた瞬間に被告若井が出てきたので、被告若井が出てきたのを見てから初めて急制動措置をとつたことになる旨証言する。

2  被告若井及び真吾の過失責任

以上の事実を総合すると、被告若井は、本件横断歩道を開始するに当たつては、対面する本件歩行者信号が青色であることを確認しているものの、横断歩行者としては、対面する同信号の表示に注意を払い、青点滅の状態になつた場合には、速やかに横断行為を完了するか、それが困難であれば、元の歩道に戻るか又は本件のような中央分離帯のある中間地点に退避するかの行動をとり、歩行者用信号が赤色になつた後に青色となる本件車両信号に従つて本件道路を通行する車両の通行の妨げにならないように配慮すべきであるにもかかわらず、途中で本件歩行者信号が青点滅から赤表示となつたことに気付くことなく漫然と歩行を継続したために、被害車と衝突するに至つたものであるから、被告若井には、周囲の交通状況に注視、配慮すべき安全確認義務を懈怠した過失が認められる。

他方、真吾も、本件横断歩道に差し掛かつた段階で、本件車両信号が青色になつたからといつてそのまま加速、通過するべきではなく、信号残りの状態で横断しようとする歩行者の存在を念頭に置き、左前方のみならず、右前方の交通事情に対しても注意して走行すべきであり、特に、本件では、中央分離帯にある植樹の存在や第二車線上に停止していた四、五台の車両の存在により右前方の注視が困難なのであるから、十分に速度を落とした上で本件横断歩道を通過することが必要であるにもかかわらず、減速するどころかかえつて加速して走行していたことについて、安全運転義務懈怠の過失を認めることができる。

よつて、本件第一事故の発生については、真吾及び被告若井のいずれにも過失があつたことが認められる。

3  被告大塚の運行供用者責任

(一) 本件第一事故との関係について

加害車の駐車行為が本件第一事故の発生に対して何らかの要因となつたと認めるに足りる証拠はなく、本件第一事故との間に相当因果関係は認められない。

(二) 本件第二事故との関係について

(1) 加害車は、本件道路上に駐車されていたのみであつて、積極的に本件第二事故を惹起させたわけではないが、本件道路のように、夜間においても車両の通行の頻繁な、駐車禁止の交通規制の敷かれている幹線道路上において、駐車位置が道路の左端とはいえ、車両を駐車することによつて車両が最も安全に走行することのできる第一車線をほぼ完全に占拠して同車線を走行しようとする車両の通行を困難な状態を惹起させることは、後方から走行してくる車両にとつては、本来安全に走行し得る道路上に巨大な障害物が作出されたことに等しく、後続車両の安全かつ円滑な走行を妨げ、車両間の追突等の交通事故を惹起する事態を招きかねないたいへん危険な行為であり、その違法性は非常に高いといわなければならない。

(2) そして、このような駐車行為を行えば、頻繁に通行する車両の円滑な走行の妨げとなり、後方から走行する車両が衝突する危険性を惹起することは、駐車行為を行う運転者にとつて容易に予測し得るものというべきである。

(3) 前記認定に係る加害車の損傷程度からすると、真吾の死亡が、本件第一事故の衝撃ではなく、むしろ、本件第二事故での衝撃によつてもたらされたと推認するのが合理的であり、真吾の死亡と本件第二事故との相当因果関係を認めることができる。

(4) 以上の事実を踏まえると、根本による加害車の駐車行為は、本件第一事故の発生との間には因果関係はないものの、真吾の死亡をもたらした本件第二事故を発生させた不法行為として評価することが相当であるから、加害車の運行供用者としての地位にある被告大塚による前記免責の主張は採用できない。

4  本件事故の発生に対する真吾の過失割合

以上のとおり、本件事故の発生に対する根本、被告若井、真吾の事故当事者の各過失の存在が認められるが、真吾の死亡という最も痛ましい結果となつたのは、加害車に衝突したときの衝撃が強かつたことによるものであり、それはまさに真吾が加速した被害車の速度が高かつたことに起因すること、道路を走行する車両にとつては、横断歩道を歩行する歩行者の安全確保が最も重要な注意義務の一つであるところ、信号残り状態で横断しようとする歩行者であつても、これは遵守されなければならないのであり、右注意義務をまずもつて守らなかつた真吾の過失が本件事故の最大の引き金となつていることを考慮すると、本件において、過失相殺されるべき真吾の過失割合としては、五五パーセントとするのが相当である(残り四五パーセントのうち、被告らが負担すべき過失割合は、被告若井が一五パーセント、被告大塚が三〇パーセントとするのが相当である。)。

5  本件第一事故に対する被告若井と真吾の過失割合

被告若井の被つた損害に係る賠償請求についても、前記認定に係る事故態様と過失内容からすると、当然に過失相殺するのが相当であるところ、本件第一事故における被告若井と真吾の過失割合としては、被告若井三〇、真吾七〇とするのが相当である(前記過失割合は、本件第一事故の発生に対する関係において判断したものであり、前項で検討した、本件事故全体に対する過失割合については、被告若井、真吾のほかに、加害車の運転者である根本の過失も評価しなければならないから、被告若井の過失割合が異なるのは当然である。)。

6  真吾の損害

(一) 治療費関係 二七万八三七四円

真吾の治療費として原告らの主張に係る金額が支出されたことを認めるに足りる証拠は全くないが、甲一二によれば、少なくとも治療費二七万五三七四円、諸雑費一四〇〇円、文書料一六〇〇円の合計二七万八三七四円を治療関係費用として支出することを要したと推認できる。

(二) 葬儀費用 一五〇万円

人は遅かれ早かれ死は避けられないのであり、葬儀費用はそのための経費として支出されるべきものであるから、本件で支出された葬儀費用全額を本件事故と相当因果関係のある損害として認めることは相当ではないものの、若齢の真吾の突然の死によつて多額の出費をせざるを得なかつた事情も勘案して、前記金額の範囲内で相当因果関係を認める。

(三) 逸失利益 三九二二万一六九六円

真吾は、本件事故当時専門学校一年生の一九歳であり、同校を卒業する予定である平成六年からは就業し得たと認められるところ、逸失利益の算定に当たつては、原告らの請求に係る平成五年賃金センサス専門学校卒の男子全年齢平均年収である四八三万六九〇〇円を基礎年収とし、生活費控除率五〇パーセント、就労可能年齢である六七歳までの四八年と卒業までの二年の各ライプニツツ係数を一八・〇七七一、一・八五九四とすると、以下のとおりとなる。

四八三万六九〇〇円×(一-〇・五)×(一八・〇七七一-一・八五九四)=三九二二万一六九六円

(四) 慰謝料 二二〇〇万円

真吾が将来のある専門学校生であり、留学等の夢を抱いていたものの、本件事故による死によりその夢も実現しないまま終わつた無念さを勘案して、前記の慰謝料をもつて相当と認める。

(五) 小計 六三〇〇万〇〇七〇円

以上を合計すると、前記金額となる。

(六) 過失相殺

前記認定に係る過失相殺をすると、二八三五万〇〇三一円となる。

(七) 既払金の控除

原告らは、加害車の自賠責保険金として二四二二万二六九九円を受領しているので、これを控除すると四一二万七三三二円となる。

(八) 弁護士費用 四一万円

本件における相当な弁護士費用としては、前記金額をもつて相当と認める。

(九) 結論

原告らの請求額は、合計四五三万七三三二円(それぞれ二二六万八六六六円)となる。

7  被告若井の損害

(一) 治療費 一八万三九三〇円

乙二、三、五の1、2、六により、前記金額の範囲内で認める。

(二) 入院雑費 二万八八〇〇円

一日当たり一二〇〇円を相当と認め、二四日間分として二万八八〇〇円を認める。

(三) 休業損害 六三万〇一六一円

(1) 乙八、九によれば、被告若井は本件事故の翌日である平成四年六月四日から同年七月二二日までの四九日間休業していたこと、前記認定に係る被告若井の受傷状況からすると、退院した六月二七日以降もしばらくは休養が必要であると思われることが認められるから、右休業期間の休業の必要性は認められる。そして、休業する直近の三か月間の平均収入は月額三一万一四二五円となるから、月収に係る休業損害は以下のとおりとなる。

三一万一四二五円÷三〇×四九=五〇万八六六一円

(2) また、被告若井は、前記休業により年末の賞与を一二万一五〇〇円減額されている(乙一〇、一一)から、これも休業損害として認めることができる。

(3) 以上を合計すると、六三万〇一六一円となるから、被告若井の請求に係る前記金額を認めることができる。

(四) 慰謝料 五五万円

前記認定に係る被告若井の受傷部位と程度、入院期間その他弁論に顕れた諸事情を勘案して、五五万円をもつて相当と認める。

(五) 小計 一三九万二八九一円

以上を合計すると、前記金額となる。

(六) 過失相殺

前記認定に係る過失相殺をすると、九七万五〇二四円となる。

(七) 既払金の控除

前記争いのない既払金三八万七九九〇円を控除すると、五八万七〇三四円となる。

(八) 弁護士費用 六万円

本件における相当な弁護士費用としては、前記金額を認める。

(九) 結論

被告若井の請求額は、合計六四万七〇三四円となる(原告らに対してはそれぞれ三二万三五一七円の請求額となる。)。

(裁判官 渡邉和義)

現場見取図

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例